偶景(アンシダン) ── 偶発的な小さな出来事、日常の些事、事故(アクシダン)よりもはるかに重大ではないが、しかしおそらく事故よりももっと不安な出来事、人生の絨毯の上に木の葉のように舞い落ちてくるもの、日々の織物にもたらされるあの軽いしわ(プリ)、わずかに書き留めることができるもの、何かを書くために必要となるちょうどそれだけのもの、表記のゼロ度、ミニ=テクスト、短い書きつけ、俳句、寸描、意味の戯れ、木の葉のように落ちてくるあらゆるもの。
バルトは『新=批評的エッセー』や『彼自身によるバルト』のなかで「偶景(アンシダン)」というバルト語を、おおよそ以上のように規定している。
花輪光、ロラン・バルト『偶景』の解題文より
incident [ɛ̃sidɑ̃] n.m. 1 小さな出来事、小事件;支障、故障、混乱 2 [社会的・外交的に波乱を呼びそうな]もめ事、紛争、トラブル;[討論などにおける]異議、言いがかり 3 〔文学史〕[小説や戯曲中の]挿話、エピソード 4 〔法〕付帯する事項、付帯請求、付帯的申告
« La vie n’est qu’une succession d’incidents » SAINTE-BEUVE
人生は偶発的な出来事の連続でしかない。(サント=ブーヴ)
ロラン・バルト『偶景』花輪光訳(みすず書房)
Roland Barthes, Incidents (1987)
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