退屈も一種の不安定な状態である。何もする気が起らないか、或は大概のことをしては危険な時に、何かしなくてゐられなくなるのだから、不安定なのは当り前で、さうなると、凡てがそれまでとは逆になるのも止むを得ない。(「逃げる話」)
吉田健一の酒にまつわる物語を讀んでゐると、讀んでゐるといふよりは、醉つた紳士にからまれて與太話を延々と聞かされてゐるやうな氣分になるのだが、併し與太話とは言つても、決して説教や自慢話などといつた詰まらないものではなくて、なかなか落ちつかない噺、敵討ち云々は出て來ない講談のやうなものであり、知らずしらずに引き込まれていくうちに、酒を讀んでゐるのか本に醉つてゐるのかが判らなくなつて...
- 「響宴」ほか /『日本幻想文学集成16』(国書刊行会):酒をめぐる物語のいくつか。
- 「百鬼の会」/『日本幻想文学大全II 幻視の系譜』 (ちくま文庫):戦後すぐの麹町あたりで異界に...
- 「金沢」「酒宴」(講談社文芸文庫):初めて読んだときの衝撃は忘れられず。
- 『酒肴酒』(光文社文庫):酒をめぐるエッセー
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