内面の審議会(コンセイユ)がおこなわれる広間は、賢明な法曹の居並ぶ火刑裁判所でなければならず、討論は厳粛に、ほとんど沈黙のうちになされなければならぬ。(p.261)僕は内面の審議会(コンセイユ)に没頭していた。今日の会議は激論の連続だった。 (p.360)
原題は « Mon plus secret conseil… »。« conseil » は「助言・忠告・意見」のほかに、「会議・評議会」という意味でも遣われる。
これを読んで、ビュトールの『心変わり』を思い浮かべた人は多いと思う。どちらも主人公の心の中が綿々と叙述される。『心変わり』は徹底して二人称で語られる一方、『心の声…』では、何人ものあいだで議論を交わす審議会よろしく「僕」「君」「彼」が織り交ぜられている。主人公が列車に乗っていて、振り返る過去の時期は複数に亘ること、途中の停車駅や通過駅でときおり現実に意識が向けられたりすること、何よりも、目下の問題が女性であることなどに、共通点がある。
『心変わり』のレオンは幾分、人生の転換点のような切羽詰まった情況にあり、『心の声…』のリュカはどちらかというと若気の至りの雰囲気である。
これを読んで、ビュトールの『心変わり』を思い浮かべた人は多いと思う。どちらも主人公の心の中が綿々と叙述される。『心変わり』は徹底して二人称で語られる一方、『心の声…』では、何人ものあいだで議論を交わす審議会よろしく「僕」「君」「彼」が織り交ぜられている。主人公が列車に乗っていて、振り返る過去の時期は複数に亘ること、途中の停車駅や通過駅でときおり現実に意識が向けられたりすること、何よりも、目下の問題が女性であることなどに、共通点がある。
『心変わり』のレオンは幾分、人生の転換点のような切羽詰まった情況にあり、『心の声…』のリュカはどちらかというと若気の至りの雰囲気である。
リュカの道程(もしくは逃避行)。ローマ数字は章番号。ナポリからイタリア南東の町タラント行きの急行に乗り込むのだが、物語は途中、ポテンツァの先のヴァリオ・ディ・バジリカータあたりで終わる。
- パラッツォ・リストーリ、ヴォメロ、ナポリ。(I, II, III, IV)
- ヴォメロの斜面。(V, VI, VII)
- ナポリ=タラント急行、駅で。(VII)
- ナポリ=タラント急行、進行中。(VII)
- (トッレ・アンヌンツィアータ、三分停車。)(VIII)
- ノチェーラ・インフェリオーレ、駅長室、照明器具置場、荷物置場。(VIII, IX, X)
- サレルノ。(X, XI, XII, XIII)
- バッティパリア、駅長室、照明器具置場。(XIII, XIV)
- エボリ。(XIV)
- ペルサノ。(XIV)
- コントゥルシ。(XIV, XV)
- シチニャーノ。(XV)
- ベッラ・ムーロ。(XV, XVI, XVII)
- バラジャーノ。(XVII)
- ピチェルノ。(XVII, XVIII, XIX)
- ティト。(XIX)
- ポテンツァ。(XIX, XX)
- ヴァリオ・ディ・バジリカータ。(XX, XXI)
〔同じ作家の作品〕
ヴァレリー・ラルボー『秘めやかな心の声…...』
岩崎力訳(岩波文庫『A.O.バルナブース全集』)
Valery Larbaud, Mon plus secret conseil... (1923)
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