2017/01/07

ミルボー『小間使の日記』

オクターヴ・ミルボー Octave Mirbeau, 1848-1917 は、「世紀末」とか「ベル・エポック」と呼ばれる時代に活躍したフランスの作家。その作品の一つ『小間使の日記』は、メイドのセレスティーヌが日記を書くという体裁で、彼女が仕える上流階級を中心に、あらゆる人間たちの偽善・低俗・酷薄・醜悪な部分が余すことなく描かれている。

主人公のセレスティーヌ自身、彼女の仕える家の者にたやすく身体を許してしまう「淫らな」面があるが(召使いという弱い立場にいるがゆえの事情が多分にある)、社会の底辺にあっても決して挫けず、真面目にひたむきに暮らしている。

そういった「いじらしさの演出」も、上位者・支配者、とくに男性視線の欲望を表す構図であるといえばそれまでかもしれない。とはいえ、ただ魅惑的で官能的な様子だけでなく、人々の醜い部分を目の当たりにし、ときには裏切られながら、それでも他者への親しみや慈しみを忘れないヒロインの姿に、読者は惹きつけられ共感するのではないかと思う。

本作は何度も映画化されている。
  • 1916年:ミハイル・マルトフ監督。革命前のロシアで初映画化。
  • 1946年:ジャン・ルノワール監督、ポーレット・ゴダード主演。アメリカ映画。
  • 1964年:ルイス・ブニュエル監督、ジャンヌ・モロー主演。フランス/イタリア映画。
  • 2015年:ブノワ・ジャコ監督、レア・セドゥー主演。フランス/ベルギー映画。邦題は『あるメイドの密かな欲望』。

オクターヴ・ミルボー『小間使の日記』山口年臣訳(角川文庫)
Octave Mirbeau, Le Journal d'une femme de chambre, 1900

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