「牡蠣はあるかい?」
「今は小潮で、ないんです。」
「それは長く続くのかい?」
「あと五、六日はね。」(宿屋の女中と会話する場面)
「いや、牡蠣はない……。……がないのでね。いや……天気は素晴らしいよ……全然寒くはない」(メグレ夫人に電話する場面)
舞台はサン=タンドレ=スュル=メールという「人口たった320人」の架空の村。ラ・ロシェルの「北西15キロメートルで、レギュイヨン岬から遠く」ないところという設定。モデルとなっているかは定かではないが、実際にレギュイヨン=スュル=メール L'Aiguillon-sur-Mer という自治体が存在する。
余所者に冷たく、村の出身ではない教師が捕まっても、それが至極当然とばかりに、だんまりを決め込む村の人々。メグレがやってきても一層うっとうしがるだけで、なかには敵視する者すらおり、知っていることや本当のことを口にしようとしない。それでも、メグレは少しずつ真相を解明していく。
原題は « Maigret à l'école »。重要な登場人物に、学校に通う3人の子どもたち(ジャン=ポール、マルセル、ジョゼフ)がいる。また、メグレが自分自身の子供時代を何度も思い返したり、ふとしたきっかけでその頃の記憶が甦ったりする場面があちこちに挿まれる。小説の雰囲気に沿うなら、邦題もそのまま「学校のメグレ」「メグレ学校に行く」としたほうが良かったかもしれない。あるいは「メグレと村の学校の子どもたち」とか。
はたして、メグレは美味しい牡蠣を食べることができるのか?
〔画像〕オランダ語版の表紙(ディック・ブルーナによる装丁)
ジョルジュ・シムノン『メグレと田舎教師』佐伯岩夫訳(河出書房新社)
Georges Simenon, Maigret à l'école, 1954
2 件のコメント:
これも私は読んでいないので、近々読んでみたくなりました。
「傾向と対策」を「メグレ篇」に絞れば、最初にわざわざ頼みに来る、もしくは相談に来るという人物は結構多い設定なので、要注意だなと感じています。
男の子に対するメグレの慈愛の眼差しにも共感できます。
メグレのところに相談にやってきて、彼を事件に巻き込むというケース、多いですね。メグレの子供への慈愛といえば「児童聖歌隊員の証言」を思い出します。とても好きな話です。
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