『チボー家の人々』 は、登場人物がとても多い。チボー家とフォンタナン家の人々を中心に、さまざまな背景をもった人々が出てくる。中には実在した人物も活き活きと描かれている。
ストーリーの展開と人物の入退場がしっかりと連動しているから、『失われた時を求めて』のように、忘れた頃に突然また顔をみせて、読者を慌てさせるようなことはあまりない。ジッドの『贋金つくり』のように、相関図が必要なほど人物同士のつながりが複雑ということもない。もし、「この人誰だっけ?」と忘れたとしても、それまで読んだところを目次でふりかえれば、何となく思い出せる。
ただし、初めて読むときに目次をひらいてしまうと、展開が分かってしまうので注意が必要だ。末尾に添えられた「解説」も同様で、ここには本編の要旨が書かれている。次の巻を読む前にストーリーをおさらいする、といった役割だ。
高野文子に『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』という、『チボー家の人々』を耽読する高校生を描いた漫画がある。めくらないように(めくれないように、ではなく)、目次をクリップで挟んでいるシーンがあって、思わず納得。
〔参考〕『チボー家の人々』全篇
(*) ローマ数字は、各篇を収録する白水uブックスの巻番号
- 第一篇《灰色のノート Le cahier gris 》 i
- 第二篇《少年園 Le pénitencier 》 ii
- 第三篇《美しい季節 La belle saison 》 iii, iv
- 第四篇《診察 La consultation 》 v
- 第五篇《ラ・ソレリーナ La Sorellina 》 vi
- 第六篇《父の死 La mort du père 》 vii
- 第七篇《1914年の夏 L'été 1914 》 viii, ix, x, xi
- 第八篇《エピローグ L'épilogue 》 vii, viii
Roger Martin du Gard, Les Thibault (1922-1940)
0 件のコメント:
コメントを投稿