2019/03/09

ピエール・ド・マンディアルグ『城の中のイギリス人』

澁澤龍彦に生田耕作。錚々たる顔ぶれの人が翻訳しているのだから、きっと面白いに違いない。しかし、彼らが執心した作家となると、無傷で読み了えることは到底できまい... そんな勝手な懸念がピエール・ド・マンディアルグを遠ざけていた。そして、先日公共の図書館で偶然出くわした本書を思いきって開いてみれば、案の定初心者にはかなり「高尚」すぎた次第。

それでも何とか読み切ることができたのは、同じ訳者による『O嬢の物語』(ポーリーヌ・レアージュ)で免疫があったからか、今回も見事な翻訳が牽引してくれたのか、あるいは心の奥底に隠された「黒い神」が共鳴したためなのか。とりあえず、エロティシズムと残酷性を極めた小説というよりは、20世紀版青ひげの物語というのが印象で、それよりも作家の細密描写の技術のほうに興味を引いた。「厳密一徹 Hostinato rigore」にもとづく幻視。

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アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『城の中のイギリス人』
澁澤龍彦訳(白水社)
André Pieyre de Mandiargues, L'Anglais décrit dans le château fermé , 1953/1979

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